長寿の秘訣は初物文化にある。
健康と長寿を願った日本の『初物文化』
初物とは、実りの時期に初めて収穫された農作物や、シーズンを迎え初めて獲れた魚介類などのことを指します。
日本人は、初物を食べると寿命が延び、福を呼ぶと考えられ、古来から縁起が良いとされてきました。
初物は、生気がみなぎっており、食べると生命力が得られると考えられていました。
また、初物には新鮮なエネルギーが込められているとも信じられていました。
そして寿命が75日延びると言われることもあります。
75日という日数には、中国から伝わる五行思想・五行説に基いた、季節の区切りの考え方や、
種をまき、発芽して収穫までの日数がおよそ75日であることなどが由来ではないかと言われてます。
「五行説」とは、万物は「木・火・土・金・水」の5種類の元素からなるという自然哲学の思想で、
季節の移り変わりは五行の推移によって起こるというものです。
また東洋医学漢方の陰陽5行の法則なども深く関係してます。
75日は季節の区切り
「木」緑,東:春の象徴。
「火」赤,南:夏の象徴。
「土」黄,土用:四季の移り変わりの象徴
「金」白,西:秋の象徴。
「水」黒,北:冬の象徴。
1年365日をこの5つの季節で割るとおおよそ75日になり、
75日ごとに季節が巡り,
その季節の初物の農作物を収獲できること。
四季のある国そして農耕民族の日本だから健康や長寿を願い「初物食文化」として伝承され、
さらにお祝いの席や贈り物にも縁起担ぎとして「初物」を選ぶ文化は、日本人の心に今も根付いているのです。
江戸時代、流通市場が整うと特に江戸っ子たちは競って初物を求めるようになりました。
幕府が売り出し日を決定し、初物を求める風潮を制限したほど大人気だったことが
『守貞漫稿』に記されてます。 江戸時代の風俗の記録した百科事典
初鰹を売り歩いている様子
斎藤月岑 (幸成) 編『東都歳事記』夏之部,博文館,明26.12.
国立国会図書館デジタルコレクション
https://dl.ndl.go.jp/pid/764256 (参照 2023-10-29)
初物好きの日本は旬の食材を大切にする文化が根付いた国なのです。
現代でも初物を楽しむイベントや行事がたくさんあります。
季節を先取りして季節を感じる文化は昔から今も変らず伝承されてきました。
そして初物を食べる時には必ず神棚や仏壇にお供えしたお下がりをいただくのが昔からの風習です。
そしてありがたく『いただきます』と挨拶をしてから食することがマナーとされてきました。
🔖ミニ知識
初物を食べる時の良いとされる方角があること
東を向いて太陽の恵に感謝する意味。
西を向くことで阿弥陀如来へ感謝を表しているとされている。
地方によっていろいろな言い伝えがあります。
昔から初ものを食べて縁起担ぎされていた代表的な食材
新鰹
初物の中でも代表的な鰹は、鎌倉時代より縁起の良いものと認識されてきました。 理由は「勝男」という当て字にあります。勝つ×男という組み合わせが勝負や戦に勝つことを連想させ、 特に武家では重宝されていたようです。
新蕎麦
古来より縁起物として晴れの日などに食べる風習のあったそば。 健康維持に役立つ成分を豊富に含んだ、とても身近な健康食と言えます。(秋新)秋蕎麦は香り味も濃い物 ちなみに(夏新)夏蕎麦はさっぱりとして暑い夏にたべやすい
新茄子
縁起が良い初夢として”一富士 二鷹 三茄子”という言葉があるように、 茄子は縁起が良い食べ物とされてきました
初茸(松茸)
現在では高級な食材である松茸ですが、江戸時代の頃は庶民の間でも秋の味覚として親しまれて いました。平安時代には縁起が良い献上品としても選ばれていた歴史があります。
新鮭
鮭は海での厳しい生存競争に打ち勝ち、生まれた川へと
過酷な旅をして戻ってきます。成長をして戻ってくるこ
とから出世魚と呼ばれ、縁起が良い魚として知られてい
ます。また、たくさんの子を産むことから子孫繁栄の
象徴とされ、現代でもお正月に鮭を食べるという地域
もあります。
新米
新茶と同じく新米が縁起が良いとされる理由にも「八十八」が関係しています。 米という漢字は八と十が組み合わさってできていることから、米には八十八の神様が宿ると考えられていました。
新酒
縁起物とされ、お年賀の挨拶やお祝いとして贈物。 醸造年の最初に仕込まれたものを新酒といいます
新茶
特に立春から数えて88日の「八十八夜」に穫れたものは、「八」の末広がりな形から長寿や幸福の 意味合いがあると言い伝えられてきました。
筍の子
高らかに空に向かう竹にあやかりたいという人々の思いから縁起が良いといわれてきました。
2023/10/30更新